飯能市メガソーラー疑惑

阿須山中サッカー場問題解説 by azneko

【公有地不正貸付 3】近傍類似地の貸付料を試算する

4つの近傍類似地と貸付料試算

以下は、飯能市土地開発公社事業決算報告書のデータから試算した阿須山中公有地170,162m2の月額貸付料に換算して比較するために、近傍類似の土地の貸付料を算出した。

概算484万円~1059万円(月額)

現行貸付料の48倍~106倍

公募時最低賃貸借料の67倍~146倍

公社からの買戻金

789万円

公社所有地簿価

595万円

送電線路鉄塔敷地補償料

1059万円

仮設送電線路補償料

484万円

現行貸付料:阿須山中市有地

10万円

公募時最低賃貸借料は72,660円。

試算方法

今回は飯能市土地開発公社(以下、公社)事業決算報告書(平成27年度~令和3年度)より試算した。

買い戻し金と簿価については、阿須山中公有地170162m2の貸付料に換算するために、次の通りに算出。 売上額÷処分面積×170162=阿須山中公有地面積に換算した場合の地価(A) A×0.35%=阿須山中公有地換算月額貸付料。「0.35%」は飯能市が公募時最低賃貸借料で用いた飯能市行政財産使用料条例に定められた月額使用料算定料率。

市の阿須山中公有地買い戻しは総額約20億円、平成23年度より開始されて、令和3年度で結了した。以下に示す金額は買い戻し計画全体の中で位置づけられているため、時価とは異なる参考値である。公募開始の前年度である平成28年度で例示した。

公社所有地簿価については、取得金額に金利、土地維持管理料等が上乗せされていることを勘案する必要がある。公募開始の前年度である平成28年度で例示した。

東京電力が支払う送電線路鉄塔敷地補償料と仮設送電線路補償料については、平成28年度のデータが現在入手できていないため、翌年の平成29年度のデータを用いた。

試算表

公社からの買戻金

買い戻し金

公社所有地簿価

阿須山中公有地簿価

送電線路鉄塔敷地補償料

東京電力支払補償料1

仮設送電線路補償料

東京電力支払補償料2

 

疑惑の公募(4)公募開始直前の設立でも応募可

設立3年未満でも応募可

阿須山中土地有効活用事業の最優秀提案事業者は2017年10月の公募開始時点で設立2年3ヶ月であり、公募要領の「事業者の資格要件」を満たしていない、として飯能市は自ら定めた公募要領に反する事業者選定を行ったとする批判が上がっている。

しかし、公募要領では「設立から3年未満は応募資格がない」とは言えない。以下、説明する。

公募要領では、「4.事業者の資格要件(3)応募の制限」として、欠格事項を挙げている。ア項~オ項までは、破産等の申立、指名停止中、税金滞納、反社会的勢力関係者、団体規制法対象者等一般的な項目が挙がる。

カ項は経営健全性にかかる基準項目である。

カ 経営が健全性を欠く(直近過去3年間の決算が債務超過、純損失、キャッシュフロー赤字の全てに連続して該当(応募グループの場合は応募グループを構成する法人の全てが該当)する状況)と認められる者。

直近過去3年間の決算が債務超過、純損失、キャッシュフロー赤字の全てに連続して該当」との欠格条項から「設立3年未満の法人では直近過去3年間の決算を終えておらず、応募の資格がない」との指摘であるが、これは、設立からの営業年数についてではない。他の条項でも営業年数に触れてはおらず、設立2年〜1年どころか、公募開始前日の設立の法人をも排除するものではない。論理上はそう解釈できる。

また、この3つの財務指標はネガティブ指標であり、該当する項目は少なければ少ないほど良い「経営不健全性指標」である。

この公募では単独法人あるいは2法人以上でのグループ応募いずれでも可能である。

以下では、実際に最優秀事業者提案となった「3社での応募グループ」で仮説検証した。

仮説検証

例1)応募グループの全法人設立3年未満(例では設立2年)で「経営不健全性指標」すべてに全期間で該当しても応募資格がある。

例)設立2年ですべてのネガティブ指標が全期該当

例2)応募グループ全法人が公募実施直前の設立であっても応募資格はある。

もっとも極端な例である。まだ決算がなく経営不健全性指標は不問である。

公募直前の設立でも応募可能

例3)実際の最優秀提案事業者である一般社団法人飯能インターナショナル・スポーツアカデミーは設立2年3ヶ月、応募グループの他の2社、株式会社ジースリーホールディングス、株式会社大和リースは設立6年以上である。

経営不健全性指標については不明であるため、最悪のケースを想定したが「経営不健全指標」に3年連続該当はしていないため、応募資格はある。順にA社、B社、C社で示した。

財務指標については1社が1項目さえクリアしていれば「3年連続規定」に該当せず

大規模造成工事なのに経営事項審査不問は不適正

阿須山中土地有効活用事業は、簿価20億円17haの公有地貸付事業であるが、貸し与えた事業者は少なくとも10億円を超える規模の造成工事を実施する。

通常、この規模の公共工事の一般入札では建設事業者に厳格な経営事項審査の成績証明書の提出が求められる。その中でも、営業年数は大きな要素である。

営業年数35年以上で60点の加点、営業年数5年ではゼロ点、6年では2点である。

当該公募については、多くの不適正・不正と容易に推認できる事象が頻発している。

今後、継続して、報告する。

【公有地不正貸付 2】公正を偽装する

詐術の学び舎

阿須山中土地有効活用事業には、詐術と考えられる多くの工夫が満ちている。

当該事業最大ポイントのひとつ土地賃貸借料も例に漏れない。

この貸付料が成立する仕組みは既に解説している。

azx.hatenadiary.com

今回は、貸付の偽装の仕組み、さらに、「では、何故に市民はだまされたのか?」についても解説する。

この問題については、すでに、2年前から一部の市民は疑問を抱いていたものの「貸付料は国土交通省のデータと市条例に基づいて算定されている。安いように見えるが適切に算定されているようだ」との判断でそれ以上の追及が停止していたようだ。

以下より、心ある市民をだます欺しのテクニックを読み取っていただきたい。

公正貸付偽装に利用した2つの公(おほやけ)

1 国土交通省都道府県地価調査価格(林地)

地価調査・地価公示について - 埼玉県

<地価調査>   国土利用計画法施行令第9条の規定に基づき、知事が毎年7月1日を基準日として、土地(基準地)の標準価格を調査し、公表しているものです。

都道府県は基準地における毎年の地価を定点観測している。そのデータは国土交通省がまとめて公表。

国土交通省地価公示・都道府県地価調査

埼玉県内で林地の基準地は5カ所。阿須山中市有地の貸付料算定基準地・飯能市可上名栗炭谷日影は基準地のうち最低価格となっている。

阿須山中市有地の貸付料算定にあたっては、この地価データを利用している。しかし、地方自治体と限らず、民間においても、土地価格の算定にあたっては、「当該土地」あるいは「近傍類似の土地」(※)の価格が参考価格となる。国土交通省土地価格調査で言う「交通施設(最寄り駅)飯能駅」からクルマで、阿須山中は10分弱3.9km、基準地の上名栗炭谷日影地内は30分20km。

公序良俗に反して、法外安価な土地価格を前大久保勝市政が捏造し、現新井重治市政はそれを容認している。

※阿須山中市有地の「近傍類似の土地」:飯能市内では阿須三王塚および孫治山、落合、岩淵などがそれにあたる。近隣の入間市青梅市立正佼成会隣接地の類似地も含まれる。クルマで21km、30分以上かかる飯能市上名栗該当地は含まれない。もちろん、もっとも近傍類似の土地は阿須山中市有地そのものであることは言うまでも無い。

阿須山中市有地と基準地・上名栗炭谷日影地内の比較

同条例は公正な公有地貸付を偽装するために飯能市が利用したもうひとつの道具である。当ブログでは、以下で解説している。

そもそも、阿須山中市有地は公有財産区分では普通財産であり、行政財産ではない。

土地賃貸借料は適正か - 飯能市メガソーラー疑惑

市が算定にあたって「参考」にしたのは次の別表(第2条関係)である。抜粋する。

  • 種類:土地
  • 使用区分:建物若しくは工作物の敷地又は展示場、駐車場、材料置場等として使用させる場合
  • 単位:月額
  • 使用料:当該土地の適正な価格に1,000分の3.5を乗じて得た額

この別表を「参考」にする飯能市側のメリットは次の通りである。

  • 公正の雰囲気を醸し出す「行政財産」を騙ることができる
  • 貸付料算定基準の計算式で惑わし公正を演出できる

飯能市は、普通財産である阿須山中市有地の貸付料算定にあたって、「当該土地の適正な価格」を「遠隔相違の土地の不適正な価格」にすげ替えて、行政財産の貸付料算定式に組み込んだ。

大久保勝市政が実行し、新井重治市政が容認した公有地貸付事業は公募最低賃貸借料の設定が不正に安価であることが判明する。

さて、当ブログの主張に対する市職員とくに不正に関わったと思われる幹部らの反論はこうだ。「同条例は適用していない。参考にしたまでだ。だから問題は無い」。

当ブログは彼らに対して次のとおり反論する。

比較項目 地価算定基準地
上名栗炭谷日影
当該土地
阿須山中市有地
最寄駅からの距離
西武池袋線 飯能駅 
20km 3.9km
埼玉県洪水想定
区域・水害リスク
情報図掲載区域
水害リスク
情報図掲載
区域
該当せず
周辺の土地
の利用現況
標高290m、約30度の北東向き傾斜、中壮齢の杉・檜の人工林地域(国土交通省地価公示都道府県地価調査より)

炭谷林道・炭谷川沿いに事業所・民家は存在しない。林道入口は通行止となっている(管理者:川越農林振興センター)
標高約200m。開発面積の8割強を占める北向き斜面は4度程度にゆるやかに傾斜。同3割弱の南向き斜面は約20度~30度。広葉樹林優勢の針広混交樹林。

市道沿いに、ラジコンサーキット場、建設資材置き場他複数の事業所が点在する。多くのハイカー、マウンテンバイク愛好家がトレールコースとして利用。

 

阿須山中市有地の貸付料算定基準地 飯能市上名栗炭谷日影

飯能市財産規則を無視する飯能市

飯能市には阿須山中市有地等の普通財産の貸付料算定基準を定めた条例規則がない。

しかし、会計事務執行にあたっては次の規則が定められている。一体性、首尾一貫性が強く求められる行政においては、財務会計全般に適用されてしかるべきである。

飯能市財産規則

  • (公有財産台帳価格)第12条 公有財産台帳に記入すべき価格は、購入に係るものは購入価額、交換に係るものは交換当時における評価額、収用に係るものは補償金額により、その他のものは次の各号に掲げる区分によって定めるものとする。
  • (1) 土地については、近傍類似の土地の時価を基準として算定した価額

阿須山中市有地は「その他のもの」に含まれるため、その貸付料については、「近傍類似の土地の時価を基準として算定した価額」に基づき、公序良俗に従い、不動産鑑定士等の専門家の意見を参考にして、一般的な貸付料算定基準により算定されなければならない。

20kmもの遠隔地かつ相違の土地を基準地とした貸付料算定は不正行為であり、不正貸付料が定められた土地賃貸借契約は無効、さらに、この法外安価な最低賃貸借料を定めた公募自体も不正である。

飯能市は、阿須山中市有地に関する公有財産台帳を公開し、市民に正当性を証明すべきである。

飯能市による公有地不正貸付は刑事事件となりうる。森林文化都市が森林破壊型メガソーラー開発を推進するにあたって、あからさまな不正を行ったと考えられる。