飯能市メガソーラー疑惑

阿須山中サッカー場問題解説 by azneko

メガソーラー着工可能時期:9月中旬頃を見込む

 飯能市は、阿須山中土地有効活用事業公募最優秀提案計画案に基づく開発計画について、7月6日付けで、担当の川越農林振興センター林業部が林地開発許可申請書を受理したとの報告を公式サイトで公表した。

 併せて、市民団体「加治丘陵の自然を考える会・飯能」の独自の調査により発見された埼玉県希少植物コクランについて、県の指導のもと、事業者と県指定調査会社による詳細な調査が行われ、移植等(※)の保全措置を行うことも報告された。

 ※コクランは繊細な植物であり移植により保全が成功した例はない、との専門家の指摘あり。 

阿須山中土地有効活用事業の進捗状況について(令和2年7月10日)

https://www.city.hanno.lg.jp/article/detail/4688

 一自治体が、自ら進行管理する開発計画の林地開発申請の受理を公式サイトで報告するのは異例。

 埼玉県林地開発許可制度は標準処理期間40日間(休日のぞく)で、これには、森林審議会開催日が含まれる。開催日は、通常であれば、埼玉県森林審議会のページで約1か月前に告知される。希少種調査が入ることで、若干長引く可能性があるが、森林審議会で許可反対の意見が多数を占めず、とくに、問題が生じない限り、今年9月中旬頃までには許可がおりて、その後、メガソーラー発電所10.9ha&子供クラブ専用サッカー練習場0.97ha(降水2mに耐える調整池兼用)、他残置緑地約5ha(県指導による)等、合計開発面積18.8ha(内公有地17ha)の着工が可能となる見込みである。

 

 

執行部・多数派が反対派に謝罪要求@市議会

ほぼ強要の不当な謝罪要求

 飯能市阿須山中土地有効活用事業(サッカー場&メガソーラー計画)の白紙撤回の請願を「加治丘陵の自然を考える会・飯能」が市議会議長に提出。市議会定例会では、2020年6月11日~19日に、この請願を含む議案の討論と採決がなされた。請願は15対4で予想通り否決された。

 この議場で、推進派(市執行部と議会多数派グループ)の一般市民と反対派議員に対する不当行為が行われた。以下、地元紙「文化新聞」の2020年6月24日記事をたたき台として解説する。まずは大見出し。

阿須山中問題で共産、謝罪

職員への威圧的発言、制止せず

 この「謝罪」の理由は、一般市民をいわば「不当要求行為者あるいは反社会的勢力もどき」(以下、反社もどき)に仕立て上げた上で、この人物と市民団体および開発反対派議員(共産党会派)の関係性をでっち上げて、一気に排除せんとした企てであった。推進派の焦りを示す事件となった。

飯能市議会6月定例会最終日6月19日、市内阿須の山林を計画地にした、市の「阿須山中土地有効活用事業」での事業提案に応募、採用された民間によるサッカー場太陽光発電施設建設に絡み、市議会本会議場で共産党の金子敏江代表以下3人の議員が揃って謝罪するという極めて異例の出来ごとがあった。同党が発行する新聞「新飯能」にも、謝罪文は掲載されるという。

 実際に「異例の出来事」と呼べるのは、市執行部と多数派議員による不当行為である。

そもそもの発端は、同党の滝沢修議員が17日に行った阿須山中土地問題についての一般質問で、答弁した職員に向かって大声を張り上げたこと。

この大声発言に関連して、中元太(公明党)、野田直人(みどりの会)両議員が平沼弘議長に見解を問う議事進行をかけたが、うち野田議員の行った議事進行で、滝沢議員の大声発言とは別に、新たな問題が発覚した。

  複数の傍聴者と関係者の証言では、滝沢議員は問題になるような大声を張り上げた事実はなく、その場にいた多くはこれが問題となったことに気づかなかったようだ。

 中元議員が、反対派の滝沢議員の「職員に対する恫喝もどき問題」を、まず、でっち上げ、「(後述のA氏が起こしたとする)恫喝問題つながり」で野田議員にバトンタッチした形だ。

多数派が一般市民、市民団体、反対派議員を「反社もどき」に仕立てる

野田議員の議事進行から明らかになったのは、阿須山中へのサッカー場太陽光発電建設事業に反対する「加治丘陵の自然を考える会・飯能」=以下、考える会=と市職員との話し合いが市役所内であった。そうしたところ、考える会関係者が職員に向かって「あなたは、頭が大丈夫か」「あなたたちのような人がいるから、本当に迷惑なんだ」など、威圧的、罵倒ともとれる発言を浴びせ、これに耐えきれなくなった職員が上司の課長に助けを求めた。

ところが、この場には金子・山田利子・滝沢修・新井巧議員の共産党会派4人も同席しており、職員への一連の問題発言を4議員はまったく制止しなかったというもの。事態を重視した野田議員は、この事実を平沼議長に告げ、議長見解を求めた。

 「話し合い」は「市の建設、企画、財務各部の担当者からの説明会」であった。場所は市庁舎5階の会議室。市側は当初合計4人、3時間半におよぶ説明会の終盤1時間あたりに課長級の4人が加わって総勢8人に。

 まず、事実認定に誤りあるいは捏造がある。「考える会関係者」とされる人物、仮にA氏としよう。彼と会代表、メンバー、共産党議員とは初対面である。共通の知人を介して「阿須山中の問題で市からの説明があるから来ないか」との誘いがあり、彼らは市庁舎4階の第2会議室に来たのであった。A氏は会メンバーとはいえない。

 また、彼は、職員による説明が始まる前に、「会と私は関係がない」と職員たちに断りを入れている。

 A氏の恫喝まがい発言については、その場にいた関係者情報では、「2ヶ月も前にA氏が質問した内容に職員がまともな回答しなかったため、語気が強くなった場面はあったが、恫喝にあたるものではなかった」としている。

平沼議長は会議の休憩を宣告し、自ら関係した職員から事実関係を確認したり、各会派の代表が集まる代表者会議を招集し、上良二副市長からの説明を求めるなど情報を収集。結果、野田議員が議事進行で指摘した通りの行為が、市役所内で行われていたということが裏付けられた。

 上副市長は、議事録に掲載されないこの時間を利用して、A氏を「いわゆる許可取り屋」「そういうひと」などと呼び、共産会派4人を含めてその場にいた者に「反社(もどき)」のイメージを植え付けた。さらに、A氏対策として、職員たちに飯能市役所における不当要求対応マニュアルを配布、飯能警察署への相談を行ったとの発言をした。

飯能市不当要求行為等対応マニュアル(フォルダ内閲覧可能。pdfファイル)

 彼は、役人特有の自己防衛のために、そのものずばりの表現はしない。しかし、反対派議員を謝罪に追い込んだのは、あきらかにこの「まがい扱い」に端を発している。

会議再開後、平沼議長は「野田議員の議事進行についてお答えする」とした上で、この問題に関しての事実関係がはっきりしたことから、▽共産党から職員に謝罪する▽6月26日発行の『新飯能』に謝罪文を掲載する。同時に共産党のホームページ、ブログ等で謝罪文を掲載する▽共産党の責任で考える会に対し、ホームページ、ブログ等で謝罪してもらう。6月26日までの掲載を促すーとの3点を共産党に指示したことを報告した。

 平沼議長も推進派に与した。A氏と問題とされる場面に居合わせて市民団体代表、メンバーからの事情聴取もなく、一方的に、A氏が反社もどきであると決めつけた。その上で、「いわば被告人欠席かつ弁護人欠席」のもと、共産会派に議場での職員に対する謝罪と党機関紙での謝罪を強要した。

 さらに、驚くべきは、共産会派の責任において、なんの落ち度のない市民団体にまでホームページ、ブログ等での謝罪を期限付きで要求している。

 平沼議長は、民主主義を冒涜した。独裁政権となんら変わるところがない。

 今回、飯能市議会で繰り広げられた異様な事態には、一般市民はもとより、自民、公明支持者であっても問題を感じるだろう。

金子議員が本会議場で行った謝罪内容は次のとおり。「さきほど、議長から指示を受けたものについて、謝罪をさせて頂きます。加治丘陵の自然を考える会・飯能のほうから、ご案内を頂き、会の方と職員の方と話し合いに同席させて頂きました。

その際、専門的な知識を持っていると思われる方もいらつしゃっており、お話をうかがいました。今日の代表者会議で副市長から説明がありましたが、その方がこれまで飯能市役所の窓口で、高圧的な態度を繰り返していたことは、全く知りませんでした。

知らなかったとはいえ、同席していたことは事実であります。改めて軽率な行動であったと、日本共産党会派全員、深く反省をしております。関係する職員の皆さんが大きなストレスを抱えて対応していることに対して、議員としてもっと配慮する必要があったと痛感しています。対応された職員の皆さんに、大変申し訳なく思っております。心から謝罪させて頂きます。大変申し訳ありませんでした。

二度とこのようなことがないよう、日本共産党一同、お約束をさせて頂きます。なお、議長より頂いている指示については、しっかりと対応をさせて頂きます。本日は、大変申し訳ありませんでした」。

 副市長が問題人物としたA氏は、反社もどきなどではなく普通の市民であることが判明している。会派代表は謝罪する必要はなかった。その時点では「その場にいたA氏、市民および独自に職員に対して調査を実施した上で謝罪するか否かを回答する」とすべきであった。 

闇に隠されたもの

 上副市長と議長、多数派が反社もどきと決めつけたA氏は、反社もどきではなく、一定規模以上の土木建設事業では普通に存在する官公庁からの許認可取得エージェントである。市に対する金品を含む「不当要求」は一切ない。ボランティアで自発的に、市の脱法あるいは違法、違反行為の可能性を指摘して是正を求めていた。本来は、市が感謝すべき存在なのである。それを副市長は蔑みを込めて「許可取り屋」と言って侮辱した。議場に「A氏は反社(もどき)」とのニオイを漂わせ、多数派有力者を通じて、議長に、反対派議員に対する謝罪を要求させて実現した。さらに、間接的に市民団体に対して根拠なき謝罪を不当に要求させた。本来、反対派議員がメガソーラー建設により損なわれる地域の安全性と開発計画の瑕疵に関する討論の機会は大きく奪われた。

 ここまで、執行部と議会多数派(議長含む)が、民主主義と当然の職業倫理を冒涜し、執拗に反対派を貶めようとするのは開発計画における「暴かれてはならない致命的な事実の存在」ゆえである。

f:id:azneko:20200707204327j:plain

文化新聞2020年6月24日

 

疑惑の公募(2)あけぼの子どもの森公園飲食店事業と比較

もうひとつの公募と比較する

 「サッカー場調整池付きメガソーラー事業計画案」が採用された飯能市の阿須山中土地有効活用事業者公募と同時期に、同じく市有地活用のための民間事業者提案制度による公募がもうひとつ存在した。トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園飲食店運営事業者公募である。この2つの土地は、いずれも、過去に飯能市土地開発公社が取得したもの。
 あらためて、阿須山中土地有効活用事業者公募の異様さが浮き彫りになった。2つの公募を比較した。

公募名 阿須山中土地有効活用事業者公募 トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園飲食店運営事業者公募
担当部署 財務部 管財課 建設部 道路公園課
対象物件 山林(土地) 都市公園内施設木造2階建
対象面積 約17ha(17万平米) 床面積:99平米
インフラ 上下水道ナシ。電気あり 上下水道・電気・電話あり
取付道路 なし※ あり
駐車場 なし あり
取得費用 20億円(土地取得費) 1.36億円(総工費)
賃貸借料/月 10万円(審査決定) 2万5千円(公募前決定)
契約期間 30年間/2019年12月10日 2年契約締結 更新可 5年間 更新可
市民向け募集 広報はんのう なし(参加表明書締切後2017年12月号掲載) あり(参加表明書締切2週間前。左の公募と併記)
文化新聞ネット版 参加表明書締め切り4日後(2017年11月10日) 要領発表44日前(2017年9月13日)
プレスリリース あり(日経BP2017年10月19日付) あり(日経BP2017年11月10日付)
公募要領公表日 2017年10月13日 2017年10月27日
参加表明書受付開始日 2017年10月13日 2017年10月30日
同受付締切日 2017年11月6日 2017年12月15日
要領公表から参加表明書受付締切日までの日数 25日間 50日間
事業提案受付期間 2017年11月27日~2018年1月26日(この間、質問期間、現地案内期間あり) 2017年11月27日~12月27日(この間、質問期間あり)
要領公表から事業提案書受付締切日までの日数 106日間 61日間

※最優秀提案事業者決定2018年2月の翌月から2020年6月末までの工期で「飯能阿須山中活用推進委員会」と称する民間土地所有者グループの「進入路」建設工事が進んでいる。市もメガソーラー計画の「進入路」すなわち取付道路工事と認めており、施工主が異なるもののメガソーラーの工事と一体のものと考えられる。都市計画法上は事業者が異なっても開発行為の目的が同一であれば一体工事と認められて、合算で、1ha超となれば、開発許可が必要となり、主要道路まで幅6m道路を付設する義務が生じる。

飯能市民向け広報がない

 2つの公募で大きく異なるのは広報である。
 阿須山中公募は、市民にもっとも注目される紙媒体の市報「広報はんのう」(毎月1日発行)に要領公表後の掲載がない。つまり、飯能市民向けのPRはほとんど皆無と言ってよい。市HPの入札情報には掲載されたはずだが、今となっては検証しようがない。現在残っているのは2017年11月13日付「市有資産(阿須山中土地)有効活用事業者を公募します【受付は終了しました】」である。ネット媒体では、日経BPネット版20171019付に公募開始当初に掲載されたとはいえ、これは、地方創生&まちづくり、自治体ビジネス系の事業者が利用する媒体であり、一般の飯能市民は関連事業者以外はほとんど見ることがないだろう。ようやく、広報はんのうに掲載されるのは、参加表明書受付締切日から3週間以上経過してから。市民は「公募を知ったその日に参加表明書を提出しようとしたが既に締め切られていて申し込みさえできなかった」ということである。しかも、あけぼの子どもの森公園公募と同記事内で扱いがごく小さい。市民の税金20億円を費やす市有地活用事業の広報としては消極的過ぎて極めて不自然と言える。

f:id:azneko:20200623225645p:plain
広報はんのう2017年12月1日号 9ページ
 一方、あけぼの子どもの森公園公募は、扱いは小さいものの、参加表明書受付締切日の2週間前に広報はんのうに、既に、締切が過ぎて参加不可となった阿須山中公募の案内と並列で掲載された。さらに、文化新聞では、要領公表の44日前に公募と飲食施設建設を大きく取り上げている。

参加表明期間が短すぎる

 阿須山中の市有地は、生い茂る森林と多数の沢や傾斜、崖地といった複雑な地形や崩れやすい地質、さらに、上下水道も取付道路もない特殊な条件。県林地開発許可制度や、都市計画法、自然保護法令をクリアする必要がある。土木建設関係の専門家でも25日間で参加表明書を作成するのは困難である。これは、要領公表日からの最長日数である。
 一方、あけぼの子どもの森公園公募では50日間。阿須山中のちょうど2倍の日数。すでに、賃料は決定していて、詳細な施設の図面・仕様書がある。駐車場や取付道路は最初から使用可能。比較的短期間での参加表明書作成が可能である。
 阿須山中土地有効活用事業者公募は以上のことからも、公募受付開始前から最優秀提案事業者が決定していた、すなわち、実質的に随意契約であったと疑わざるを得ない。