飯能市メガソーラー疑惑

阿須山中サッカー場問題解説 by azneko

疑惑の公募(3)「経営健全性ゼロで最優秀」の仕組み

不健全経営でも応募&審査通過

いわば「経営健全性がゼロ」でも、審査通過となり得る仕組を解説する。

経営健全性については、公募では次の通り、2度の認定が行われた。

  1. 応募前。公募要領「応募の制限」に示された欠格事項に該当しなければ、応募が可能となる。その条件は緩く、とくに、グループ応募では構成法人のうち1社あるいは2社以上が経営健全性欠格事項に対象全期間全項目に該当していても、他の1社が容易にカバーできる。
  2. 提案審査時。5つの大項目は各合計0点で原則として審査失格となる。厳格さを装っているものの、経営健全性については、唯一、除外され失格にはならない。配点は2750点満点中110点と小さい。

まず、1.について、詳細を述べる。

応募前の経営健全性評価がゆるすぎる

欠格事項

公募要領では、「4.事業者の資格要件(3)応募の制限」として、欠格事項を挙げている。

ア項~オ項までは、破産等の申立、指名停止中、税金滞納、反社会的勢力関係者、団体規制法対象者等ごく一般的な項目が挙がる。ところが、カ項は不自然に緩すぎる。

カ 経営が健全性を欠く(直近過去3年間の決算が債務超過、純損失、キャッシュフロー赤字の全てに連続して該当(応募グループの場合は応募グループを構成する法人の全てが該当)する状況)と認められる者。

入れ子がわかりにくいので、次に整理する。

<経営健全性にかかる欠格事項>

直近過去3年間の決算が債務超過、純損失、キャッシュフロー赤字のすべてに連続して該当する状況。応募グループの場合は応募グループを構成する法人の全てが該当していること。

架空のA(代表)、B、Cの3社グループを例とした「応募の制限 経営健全性評価表」を次に示す。2社がすべての欠格事項に該当しても、他の1社が3年間に1度でも1つの経営健全性項目をクリアしていれば応募グループの応募資格は制限されない。

応募グループ3社で、3年間延べ27項目すべて×では参加できないが、○が1以上で応募可、提案審査を受けることができる。

「応募の制限」 経営健全性評価表(例)

 これでもグループとしては健全経営とされて、応募提案が可能となる。

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経営健全性評価ゼロでも審査失格回避

低い配点で経営健全性を軽視

参加表明書提出後、応募制限を受けなければ、提案審査となる。ここでは、評価点2750点満点のうち、経営健全事業者加点が110点と、非常に低い。

簿価20億円市有地を貸し付けるプロジェクトとしては適正ではない。

実際には、最優秀提案事業者に選定されたA社(厳密には3社の応募グループ)は経営健全性加点が0点であるため、3社のうち1社以上が過去3年間の決算のうち、「貸借対照表上資産超過」「損益計算書上純利益」「キャッシュフロー黒字」のすべてに該当していない不健全経営法人(グループ)であったことが分かる。

大項目で唯一の失格対象外

さらに、「7.審査の基準(3)」には配点、評価のポイントともに、「審査項目の大項目ごとの合計点のうち、いずれかが0 点であった場合には失格とします。」と審査の厳格さを示しているように見えるが、対象は、5つの大項目のうちア~エまでの4つであり、「オ.経営健全事業者加点」は、唯一、除外され、0点であっても、失格とはならない。ここでも、過去の経営実績として重要な経営健全性が異様なまでに軽視されている。

提案審査「大項目」配点&失格除外表 

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参照

公募要領(飯能市HPより)

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【比較検証】伐採木問題:広島市と飯能市

広島市では業務上横領事件に発展

公有地伐採木の処分にかかる不正あるいは不適正問題は、飯能市以外でも起きている。

広島市が2001年の新埋立地選定作業着手から2008年の建設工事決定・環境アセスメントを経て、2022年内の供用開始をめざし進めている佐伯区湯来町の恵下(えげ)処分場建設工事である。この事業では、市が伐採木の廃棄処分を依頼した事業者が契約に反して、市場に直売し、本来、市が得るべき売却益等を得たとして、事業者および社員ら5名および2社が業務上横領等で書類送検されている(2018年11月報道)。市は事業者らを入札停止処分とした。

その後、事業者らは不起訴処分。送検の1年前に、市民の指摘と監査請求により市が不適正を認めて、不正利得分を事業者らに返還させたこと、市有林の伐採木の処分は有価物として制度設計するべきところを市がそれを怠り、無価物として廃棄処分としたことも事件発生の要因であり、事業者らだけが責められるべきではなく、情状酌量の余地があり、不起訴となった公算が大きい。

この広島市伐採木問題は、住民監査請求(2017年8月)を含めて市民の市政に対する疑惑追及が刑事告発に結びつき警察を動かし、市政の歪みを正した例として参考にしたい。

飯能市の阿須山中土地有効活用事業(事業区域面積17ha)では、わずか1ha弱の地方創生を名目としたクラブ専用サッカー場を口実にして、その数百倍の工費のメガソーラー開発計画が住民同意偽造等々の違法脱法行為が行われつつ進行中である。

市有林伐採木問題も看過することはできない。飯能市が不適正に作成し、事業者と締結した土地賃貸借契約書と細目覚書を根拠に推定数千万円以上の伐採木を事業者に無償譲渡。事業者が市場に売却し利益を得ているのである。行政主導による計画的で大規模な資産流出であり明らかな背任行為と考えられる。

伐採木問題比較検証表

飯能市の阿須山中土地有効活用事業では伐採木問題以外に多くの違法脱法行為が疑われているが、ここでは、伐採木問題に限定した。

市名 広島県広島市 埼玉県飯能市
事業名 恵下埋立処分場建設工事 阿須山中土地有効活用事業
事業概要 建設事業者は一般入札選定。市支出による市有地での一般廃棄物最終処分場建設事業。2016年本体工事着工。2022年内供用開始予定。 公募選定事業者に地方創生名目で市有地貸与。2020年着工。最優秀提案はクラブ専用サッカーグラウンド0.97ha&付帯設備メガソーラー(6.4MW)建設運営。2022年9月完成予定
総工費 204億円 ※1 61億7千万円 ※2
事業区域面積 102ha 17ha※3
売却数量 880立米 7010立米 ※4
流出金額 560万円 うち売却益349万円 数千万円以上(推定※5)
売却根拠 なし。契約に反する

説明:市は伐採木を無価物とし、事業者に廃棄処分を依頼した。運搬・処分費用が支払われたにも関わらず事業者は伐採木の一部を市場に直売して利益を得た。
契約(正当性が疑われる)

説明:契約書・覚書は伐採木の市から事業者への無償譲渡と事業者が売却益を得ることを認めている。
問題行為 事業者による横領行為

事業者が伐採木を市場直売、本来の廃棄処分場までの運搬・加工費用、売却益を横領。市が有価物の立木を無価物として廃棄処分する制度設計も不適正。
市による背任行為

市が伐採木を事業者に無償譲渡した。事業者はこれを売却して利得を得た。
共通問題 市が得るべき伐採木売却益が事業者に渡った
住民監査請求 あり なし
住民監査請求結果 監査委員会の勧告あり 
市長に対する措置内容「事業者が得た不当利得等の返還請求」
司法関係 市民が県警に刑事告発。佐伯署は大林組と下請社員ら5名 業務上横領、他2社を廃棄物処理法違反容疑で書類送検(2018年11月報道)

その後、全員不起訴。理由「事実認定するに足る証拠がない。情状全般を考慮」
未定

※1 恵下埋立地(仮称)関連の工事情報(広島市HP)の全24件契約金額集計

※2 埼玉県森林審議会資料に資金計画金額として記載。しかし、許可後の変更以降の詳細は市側開示資料が黒塗り隠ぺいされており不明。

※3 公募選定後、事業者取得の民地1.8haを加えると合計18.8haであり、都市計画法上の太陽光発電開発区域は全面積の95%に及ぶ。

※4 飯能市開示情報「伐採樹木処分数量一覧」集計。当初見積7075t比重0.5なら14150立米とも。飯能市開示情報は根拠不明な内容が見受けられるため未確定である。

※5 推定数千万円以上 参照 伐採木評価額を試算する - 飯能市メガソーラー疑惑

広島市恵下処分場伐採木問題資料

事業概要

恵下埋立地(仮称)の整備について広島市HP)

住民監査請求関連(広島市HP)

恵下埋立地(仮称)建設工事に係る伐採木の処分について監査結果 平成29年10月6日公表

恵下埋立地(仮称)建設工事に係る伐採木の処分について 監査結果 平成29年12月6日公表

住民監査請求に基づく監査の結果に対する措置事項について 平成29年12月28日公表

市民活動

THINK EGE!恵下埋立地事業を知ってください

ノラぶん雑記帳 恵下埋立地問題

新聞記事(見出しのみ)

中国新聞2017(H29)年9月14日 広島市の恵下処分場建設の伐採木 市「産廃扱い」業者が転売 「市に損害」住民が監査請求 市「契約上問題ない」

中国新聞2017(H29)年10月11日 広島市の恵下処分場の伐採木 契約違反の直売を認定 市監査委員 転売は住民訴え退け

中国新聞2017(H29)年10月13日 伐採木問題 誠実対応を(報道部記者論評)

中国新聞2017’(H29)年12月7日 木材売却益349万円請求 処分場問題 広島市、業者から受領

中国新聞2018(H30)年11月2日 広島市処分場建設の伐採木直売 請負業者側を書類送検 佐伯署 業務上横領疑いなど 市は再発防止強化を

中国新聞2019(H31)年1月5日 広島の伐採木直売 業者側不起訴

謝辞

本稿をまとめるにあたっては、広島市恵下処分場問題に詳しいN氏より詳細な資料・見解をお送りいただいた。感謝申し上げる。

 

【公有地不正貸付 1】算定対照表

算定対照表

飯能市行政財産の使用料に関する条例」に基づく土地使用料(月額賃貸借料)の算定は次表の通りに行われた。

阿須山中土地有効活用事業では、公募最低賃貸借料を阿須山中市有地より大幅に低価格の土地を基準地として算定し月額72,660円とした。事業者提案として27,340円上回り、月額100,000円となったものの、市場価格、適正価格より大幅な値引きを実現したと考えられる。→土地賃貸借料は適正か - 飯能市メガソーラー疑惑

下表では阿須山中市有地取得金額を「飯能市行政財産の使用料に関する条例」の算定基準に基づき仮に算定した。すると、月額貸付料700万円(年額8400万円)との結果となる。ただし、当該土地は普通財産であり、条例は適用できるものではない。あくまで、市が公募時最低賃貸借料の算定条件と同様として比較対照としたに過ぎない。

本来なら市の収入となるべきこの莫大な差額を市収入とせず、流出させたことは背任行為と言わざるを得ないのではないか。

さらに、後日、解説する通り、議決事件であるにもかかわらず、議会に諮らず、市長専決処分としたことは地方自治法に抵触する可能性を指摘しておきたい。

注1.阿須山中市有地価については、取得価格を地価として算定した。

項目 契約対象地
阿須山中市有地
算定基準地
上名栗炭谷日影
「当該土地」か? 当該土地
である
当該土地
では無い
土地単価/m2 推定11,754円 122円
阿須山中
市有地面積
170,162m2
阿須山中市有地
面積換算金額
推定20億円 2,075万9,764円
条例に定める料率 0.35%
公募時最低賃貸借料(月額)=土地価格×料率 推定適正金額
700万円
7万2,660円
契約賃貸借料 10万円
推定値引き率(概算) 99%

 

 

飯能市行政財産の使用料に関する条例

土地賃貸借契約書および細目覚書 - 飯能市メガソーラー疑惑

土地賃貸借料は適正か - 飯能市メガソーラー疑惑

土地賃貸借契約は地方自治法237条2項に違反か - 飯能市メガソーラー疑惑

更新

2021年12月4日 契約賃貸借料を別項目とした。ほか一部訂正。

2022年2月18日 リンク修正

2022年6月6日 ブログタイトル変更 

       →新【公有地不正貸付 1】算定対照表

        旧【土地賃貸借料問題】大幅値引きの仕組み

2022年6月10日 「下表では阿須山中市有地取得金額を「飯能市行政財産の使用料に関する条例」の算定基準に基づき仮に算定した。すると、月額貸付料700万円(年額8400万円)との結果となる。ただし、当該土地は普通財産であり、条例は適用できるものではない。あくまで、市が公募時最低賃貸借料の算定条件と同様として比較対照としたに過ぎない。」を加入。