メガ問研

飯能市メガソーラー問題を中心に解説

【比較調査】市有地活用公募:飯能市と天理市

 2011年3月11日の東日本大震災原発事故以降、地方自治体ではクリーンエネルギーとしてメガソーラー発電所の開発が持て囃された時期がある。その流れを組む埼玉県飯能市奈良県天理市の市有地開発計画を比較した。この2市の例では、事業者の選定は公募プロポーザル方式で、対象の用地面積、取得金額が比較的近い。さらに、人口、面積、財政規模、都心アクセス等が近似で比較対象として適当と判断した。(この記事は随時更新する)

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飯能市トーベ・ヤンソンあけぼのこどもの森公園
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天理市のシンボル:天理教本部神殿(市HPにも掲載)

公募による開発事業比較(ともにメガソーラー発電所が採用される※1)

市有地名 埼玉県飯能市阿須山中 奈良県天理市福住町
公募方式 公募型プロポーザル方式 公募型プロポーザル方式
募集対象 地方創生に資するもの 太陽光発電所限定
最優秀提案事業者決定時期 2018年2月 2013年8月
土地賃貸借契約締結時期 2019年12月 2014年8月
運転開始時期 2022年3月期限※2 2017年2月
賃貸借期間 最長30年間 発電期間20年間+設置撤去期間
土地取得目的 自然公園 工業用地
用地面積 17ha 43ha
市取得価額 14億円 22億円
1ha当り取得価額 0.8億円 0.5億円
用地賃貸料/年 120万円 4300万円
1ha当り賃貸料/年 7万円 100万円
モジュール容量 10.2MW(※2) 23.1MW
原状回復 不明(※2) ソーラーパネル撤去

市勢等の比較

市名 飯能市 天理市
人口 7.9万人 6.5万人
面積 193km2 86km2
一般会計予算(R2) 298億円 248億円
都心電車通勤時間※3 1時間 1時間15分
キーワード 森林文化都市 宗教都市

比較する

・用地コスト:飯能市の賃貸料が桁外れに安い。1ha当たりの土地取得金額は、天理市の1.6倍高いにもかかわらず、賃貸料は100分の7と大きな差だ。
・当初土地取得目的:飯能市土地開発公社は1992年、取得目的を森林を活かした「自然公園整備」と理事会承認。このこのことは、2013年、市による公社からの土地買戻し開始以降、市議会で、毎年確認されていた。しかし、公社の解散以外に明確にされない取得目的のままでは市から公社への分割支払予算案(10年で20億円予定)に賛成できないとする反対討論に対して、多数派賛成討論は「自然公園整備目的は変わらない。あらためての採択は不要」との主張を毎年繰り返したため、市の取得目的は曖昧な状態を継続した。そして、2017年10月「阿須山中土地有効活用事業者公募」で「取得目的・自然公園整備」が「活用目的・地方創生」に置き換わった。そして、「地方創生」は国際交流と雇用創出で理念強化されて、「メガソーラー&調整池兼公式サッカー場」という大規模な森林破壊を前提とする本来の「自然公園整備」とは正反対のものにすり替わってしまったのである。市長や推進派議員が阿須山中土地について、「問題はない。話す必要はない」として、市民に情報を与えず、触れたがらない理由のひとつである。一方、天理市は、旧天理市土地開発公社の土地取得時から目的は工業用地であり、大幅な変更はない。

共通する問題点

 いずれも、市民の税金により取得した市有地の貸与にかかわる公募であるが、公募企画決定に至るプロセス、さらに、審査とその後の事業化プロセスが不透明。最優秀提案事業者が決定した後も選定委員の氏名は非公表で、選定書類の情報開示も一部に留まる。一般入札と異なり、市側の金銭的負担は事務費程度であり、市議会での審議もな。市民が知らないうちに、市民にとって不本意な計画が進められてしまいがちな選定形態だ。
 とくに、飯能市は、森林文化都市宣言や第6次森林整備計画など市政の根幹に関わる宣言・計画に反する開発計画にも関わらず、市民に詳細を知らせることをせず、市議会では、多数派議員により、開発計画反対討論を妨害する言動があからさまに行われた。参加表明書提出段階では、自然環境保全を前提にした森林文化都市にふさわしい提案があったものの提出だけに終わり、最終審査に残った2案はともにメガソーラー発電所を内容に含んでいたことに加えて、最優秀提案事業者は、選定の大前提となるべき経営健全性に評価0点が与えられたことが市民の情報開示請求で土地賃貸借契約後に発覚。さらに事業者が社歴2年のため「3つの財務指標による制限」を最初からクリアすることが解り市民の不審感が強まっている。
 天理市では、官製談合事件に発展し、大阪地検特捜部の捜査対象となった。第三者委員会による調査報告書「天理市公募型プロポーザル等検討委員会報告書」に基づき天理市は改善に向けた取り組みをはじめている。
 また、飯能市と同様に審査での事業者に対する経営健全性評価にも問題が生じた。当初、一般社団法人メガソーラー・ジャパン(+2つの外資系企業との連合体)が選定されて、経済産業省再生可能エネルギー発電設備の認定を受けたものの、連合体の1企業が会社更生法手続きに入ったため事業撤退となり、最終的には、Kクリーンエナジー奈良株式会社(出資率 オリックス株式会社70%、株式会社九電工30%)が事業継承し、天理市はKクリーンエナジー奈良株式会社と用地の賃貸借契約を締結した。
 「最優秀提案事業者の立場」は実質的に独占的営業権と同様の高い価値をもつ。ここでの「権利の売買」の有無は不明。

※1 飯能市最優秀提案事業者のスポーツクラブ運営団体は公式サッカー場0.9ha+メガソーラー発電所11haを計画。公式サッカー場は、少年サッカーの公式戦が可能な広さと人工芝のフィールドとなっている。しかし、上下水道が敷設できない場所であるため、トイレは仮設、飲料水はサーバーまたは自販機を利用。観客席はナシ。これで、地方創生に貢献できるのであろうか。雨に対しては、降水量20cmを超えると外周の側溝が溢れて、グラウンドがメガソーラーの調整池として機能。過去43年間の飯能市最大雨量1.16m水没、最大2mの水没に耐えるという。近年、台風、集中豪雨の降水量は過去データーをはるかに凌ぐ傾向にあるし、広範囲の山林破壊による保水力の減少により頻繁に調整池機能を発揮することは容易に予想される。サッカー場としての機能を正常に果たせるのかは疑問である。
※2 飯能市は開発計画詳細について、県林地開発許可決定後に公表するとしている。「発電出力」は約6.4MW(管財課)。「運転開始時期」はエネ庁売電買取認定が2019年3月のため運転開始期限2022年3月31日までと予想できる。
※3 東京・大阪のターミナル駅までの所要時間