飯能市メガソーラー疑惑

阿須山中サッカー場問題解説 by azneko

疑惑は着工後さらに拡大

阿須山中問題を振り返る

 10月14日着工との情報は、飯能市、事業者(一社)飯能インターナショナル・スポーツアカデミー(以下、アカデミー)が10月11日開催、参加対象を絞りに絞った住民説明会で告知された。

 既に外見上は「林地開発許可標識」がラジコンサーキット場の唐沢川対岸に掲出されていて、いつでも着工可能のように見える。伐採目印の赤や黄色のテープが張り巡らされる数も増える一方。あらためて、阿須山中メガソーラー疑惑の構造を短くまとめる。

【主文】埼玉県飯能市が20億円で取得した市有地を年120万円で一地元民間法人に貸し出し、一般社団法人 飯能インターナショナル・スポーツアカデミー、大和ハウスグループらが61億7千万円を投じてメガソーラー(と形ばかりのサッカー場)を建設。アカデミーはリースを受ける。市試算で売電収入は年間約2億2千万円(リース料不明)。20年契約2年ごと更新。市政・市有地の私物化により便宜を供与した案件と考えられる。飯能市がことあるごとに持ち出す「地方創生」は、ごく一部のための「利権創生」と同義であることが鮮明になってきた。

【追記】共用取付道路で阿須山中と結ぶ2つのソーラー発電計画がさらに拡張進行すれば、3事業合わせて格段に巨大な開発計画となる。

 飯能市は関与した複数の法令で脱法行為を繰り返している。メガソーラー事業の詳細や災害可能性を隠蔽したまま6月から頻繁に「阿須山中土地有効活用事業について」との小冊子全8ページ及び縮小版を全戸配布してきた。5月からは、市民団体の公開質問状に回答する形で特設サイトを開設、ほぼ同内容で展開。これで「サッカー事業ならいいのでは」と騙された市民は多数いるだろう。

3つのソーラー発電は取付道路を共用

 さらに、疑惑は、あらたに判明したイーゲート株式会社(渋谷区)による近隣2カ所三王塚・孫治山でのソーラー発電事業にも広がる。

 取付道路(事業名:AZU-YAMANAKA AMUSEMENT ROAD 和訳:阿須山中娯楽道路)は阿須山中市有地に連なるだけでなく、イーゲート社の開発予定地2カ所、合計3カ所を結んでいる。

 道路工事発注者は民間土地所有者で結成された「阿須山中活性化推進員会」で、アカデミーも一員だ。イーゲート社も取付道路の一部を所有している。市はたびたびこの道路を円滑な開発行為に必要性を認めている。着工は、公募での事業者決定の翌月となっており、サッカー場を含めた、複数の開発区域の一体性をあからさまに示しているが、都市開発法開発許可権者の飯能市が後ろ盾となって事なきを得ている。

コクラン移植では条例逸脱行為も

 埼玉県野生希少動植物種保護条例による県希少動植物指定コクランの保全措置は、届出の8月6日から2ヶ月以上経過した現在(2020年10月13日)も事業者から県環境部への連絡がなく、未実施と考えられる。しかし、着工後であっても、保全措置は可能。届出制である。しかし、飯能市の管理進行にもかかわらず(あるいは、だからこそ)、コクラン移植について条例違反行為が発覚している。

 飯能市は自ら発行した公文書で飯能市と事業者が、埼玉県野生希少動植物種保護条例12条5項の30日規定(届出後30日経過前の採取等禁止)を無視して移植実施を画策したことが分かっている。

 林地開発許可が下りた今、許可手続はすべて終了。残る他法令手続きは通過容易な届け出制だ。

 着工すれば、いずれ、フェンスが張り巡らされ、重機の音は鳴り響き、豊かな土壌は削られ、沢は埋められ、川は濁り、生き物は住処を失い、無意味に殺されることになるだろう。

 しかし、山林を破壊する造成工事をしてまで行うメガソーラー利権は今後、全国のマスコミの注目の的となる。在京某テレビ局は既に今月下旬放送に向けて取材&制作中だ。報道部も動き出した。

 また、近日中に埼玉県による希少動植物調査団による調査が予定されているとも聞く。

 大久保勝市長が2013年7月初当選時の公約「日本一のメガソーラー設置」を、翌年6月市議会一般質問で野田直人市議が絶賛し、阿須山中公有地(公社取得目的:自然公園)をメガソーラー設置場所として提起。初当選から足かけ7年と3ヶ月を掛けた市長案件は、今、謎の資金計画61億7千万円による着工という大きな節目を迎えた。