公募時最低賃貸借料の根拠
まず、阿須山中市有山林17haの公募時最低賃貸借料の算定基準、基準地等を検証する。
飯能市は「平成29年度地価調査価格(林地)」並びに「飯能市行政財産の使用料に関する条例(平成17年 条例第 46 号)別表」を参考に算出した、としている。
算定
まず基準地の土地単価に事業用地面積を乗じる。次に「飯能市行政財産の使用料に関する条例 別表」に定める料率を乗じて最低土地賃貸借料72,660円を算出した。
算定は次の通り。基準地は当ブログで調査特定した。
基準地:埼玉県飯能市大字上名栗字炭谷日影3052番 価格122円/m2
阿須山中土地有効活用事業用地 面積 170,162m2
122円/m2×170,162m2=20,759,764円=市有地取得額20億円の100分の1
20,759,764円×0.35%=72,659.174円≒72,660円(1円単位切り上げ)
土地賃貸借料は不適正に安価
このように、飯能市は、20億円で購入した約17haの市有地を約100分の1の単価の基準地を基準に賃料ダンピングを行い、公募時最低賃貸借料とした。
賃貸借する土地そのものの価格がもっとも適正(※)なのは明白であり、飯能市の行為は不適正である。※当該条例の関連条文:別表「当該土地の適正な価格に1,000 分の 3.5 を乗じて得た額」
適正な最低賃貸借料は該当市有地の取得価額(※)から、次の通り概算することができる。※阿須での林地売買取引のサンプル数が少ないため取得価格を基準価格とした。
20億円×0.35%=700万円/月
公募時最低賃貸料72,660円/月の約100倍が適正な最低賃貸借料である。
公募では、この最低額を上回る賃貸借料が期待され、採点に反映される。最終的に、選定事業者は、2万7,340円上回る月額10万円を提案して、最優秀提案事業者として選定、土地賃貸借契約書に反映、締結された。
契約されたこの賃貸借料は「適正価格」を基準とすれば70分の1と格安であり、適正とは言い難い。
基準地詳細
出処:国土交通省・都道府県地価調査・埼玉県(林地)平成29年度 基準日7月1日
基準地所在地・地番:埼玉県飯能市大字上名栗字炭谷日影○○○○番
地積6,261m2
価格:122,000円/10a(=122円/m2)
利用区分、構造:用材用途
交通施設、距離:飯能、20,000m
周辺の土地の利用現況:標高290m、約30度の北東向き傾斜、中壮齢の杉・檜の人工林地域
用途区分、高度地区、防火・準防火:林業本場林地
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この基準地は、埼玉県内5カ所の基準林地で最低単価となっている。
さらに、この土地は、埼玉県水害リスク情報図に掲載された次の区域内、あるいは、直近にある。
・荒川水系炭谷川(実施区間)
左岸:飯能市上名栗大字上名栗字炭谷3047番の1地先から入間川への合流点まで
右岸:飯能市上名栗大字上名栗字炭谷日影3049番の1地先から入間川への合流点まで
「飯能市行政財産の使用料に関する条例」適用は適正か
当該市有地の使用区分は「建物若しくは工作物の敷地又は展示場、駐車場、材料置場等として使用させる場合」とされ、月額賃貸借料は「当該土地の適正な価格に1,000分の3.5を乗じて得た額」と定められている。
基準地が「当該土地」ではなく、格段に安価な林地を基準地としており、「適正な価格」とならず、明確に不適正である。
さらに、この条例は飯能市所有の行政財産に適用され、普通財産に適用されないと考えられる。阿須山中市有地は取得時には「取得目的:自然公園整備」とされて、議会でも多数派による討論で肯定されてきたもののの、実際には、自然公園とはならず、普通財産のまま放置されて、2017年秋に地方創生の名の下に、市による有効活用事業開始宣言、そして、同年10月13日に阿須山中土地有効活用事業公募開始、最優秀提案は、自然公園整備目的とは180度異なる大規模な自然破壊、希少動植物排除廃棄を伴うサッカー場&メガソーラー開発計画であった。
話を戻す。この市有地は、一度も自然公園とはならず、普通財産のままであると考えられる。しかし、行政財産の使用料に関する条例が適用されている。これは適正であろうか。
関連投稿
次の投稿では、今回の投稿に関連して、契約解除・地方自治法違反による事業中止を考える。
土地賃貸借契約は地方自治法237条2項に違反か - 飯能市メガソーラー疑惑
参考資料
更新情報
2022年5月30日 埼玉県洪水想定区域図→水害リスク情報図 に修正