もうひとつの公募と比較する
「サッカー場調整池付きメガソーラー事業計画案」が採用された飯能市の阿須山中土地有効活用事業者公募と同時期に、同じく市有地活用のための民間事業者提案制度による公募がもうひとつ存在した。トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園飲食店運営事業者公募である。この2つの土地は、いずれも、過去に飯能市土地開発公社が取得したもの。
あらためて、阿須山中土地有効活用事業者公募の異様さが浮き彫りになった。2つの公募を比較した。
公募名 | 阿須山中土地有効活用事業者公募 | トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園飲食店運営事業者公募 |
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担当部署 | 財務部 管財課 | 建設部 道路公園課 |
対象物件 | 山林(土地) | 都市公園内施設木造2階建 |
対象面積 | 約17ha(17万平米) | 床面積:99平米 |
インフラ | 上下水道ナシ。電気あり | 上下水道・電気・電話あり |
取付道路 | なし※ | あり |
駐車場 | なし | あり |
取得費用 | 20億円(土地取得費) | 1.36億円(総工費) |
賃貸借料/月 | 10万円(審査決定) | 2万5千円(公募前決定) |
契約期間 | 30年間/2019年12月10日 2年契約締結 更新可 | 5年間 更新可 |
市民向け募集 広報はんのう | なし(参加表明書締切後2017年12月号掲載) | あり(参加表明書締切2週間前。左の公募と併記) |
文化新聞ネット版 | 参加表明書締め切り4日後(2017年11月10日) | 要領発表44日前(2017年9月13日) |
プレスリリース | あり(日経BP2017年10月19日付) | あり(日経BP2017年11月10日付) |
公募要領公表日 | 2017年10月13日 | 2017年10月27日 |
参加表明書受付開始日 | 2017年10月13日 | 2017年10月30日 |
同受付締切日 | 2017年11月6日 | 2017年12月15日 |
要領公表から参加表明書受付締切日までの日数 | 25日間 | 50日間 |
事業提案受付期間 | 2017年11月27日~2018年1月26日(この間、質問期間、現地案内期間あり) | 2017年11月27日~12月27日(この間、質問期間あり) |
要領公表から事業提案書受付締切日までの日数 | 106日間 | 61日間 |
※最優秀提案事業者決定2018年2月の翌月から2020年6月末までの工期で「飯能阿須山中活用推進委員会」と称する民間土地所有者グループの「進入路」建設工事が進んでいる。市もメガソーラー計画の「進入路」すなわち取付道路工事と認めており、施工主が異なるもののメガソーラーの工事と一体のものと考えられる。都市計画法上は事業者が異なっても開発行為の目的が同一であれば一体工事と認められて、合算で、1ha超となれば、開発許可が必要となり、主要道路まで幅6m道路を付設する義務が生じる。
飯能市民向け広報がない
2つの公募で大きく異なるのは広報である。
阿須山中公募は、市民にもっとも注目される紙媒体の市報「広報はんのう」(毎月1日発行)に要領公表後の掲載がない。つまり、飯能市民向けのPRはほとんど皆無と言ってよい。市HPの入札情報には掲載されたはずだが、今となっては検証しようがない。現在残っているのは2017年11月13日付「市有資産(阿須山中土地)有効活用事業者を公募します【受付は終了しました】」である。ネット媒体では、日経BPネット版20171019付に公募開始当初に掲載されたとはいえ、これは、地方創生&まちづくり、自治体ビジネス系の事業者が利用する媒体であり、一般の飯能市民は関連事業者以外はほとんど見ることがないだろう。ようやく、広報はんのうに掲載されるのは、参加表明書受付締切日から3週間以上経過してから。市民は「公募を知ったその日に参加表明書を提出しようとしたが既に締め切られていて申し込みさえできなかった」ということである。しかも、あけぼの子どもの森公園公募と同記事内で扱いがごく小さい。市民の税金20億円を費やす市有地活用事業の広報としては消極的過ぎて極めて不自然と言える。 一方、あけぼの子どもの森公園公募は、扱いは小さいものの、参加表明書受付締切日の2週間前に広報はんのうに、既に、締切が過ぎて参加不可となった阿須山中公募の案内と並列で掲載された。さらに、文化新聞では、要領公表の44日前に公募と飲食施設建設を大きく取り上げている。
参加表明期間が短すぎる
阿須山中の市有地は、生い茂る森林と多数の沢や傾斜、崖地といった複雑な地形や崩れやすい地質、さらに、上下水道も取付道路もない特殊な条件。県林地開発許可制度や、都市計画法、自然保護法令をクリアする必要がある。土木建設関係の専門家でも25日間で参加表明書を作成するのは困難である。これは、要領公表日からの最長日数である。
一方、あけぼの子どもの森公園公募では50日間。阿須山中のちょうど2倍の日数。すでに、賃料は決定していて、詳細な施設の図面・仕様書がある。駐車場や取付道路は最初から使用可能。比較的短期間での参加表明書作成が可能である。
阿須山中土地有効活用事業者公募は以上のことからも、公募受付開始前から最優秀提案事業者が決定していた、すなわち、実質的に随意契約であったと疑わざるを得ない。